● 発表者:中野克彦(立命館大学・国際関係研究科・博士後期課程1年)

  報告:「エスニック・メディアの展開と日本社会・1896年〜1999年」  

現在、日本のジャーナリズムは、根本的な国際的変化に直面している。 特に放送分野では、国際的な規制緩和、市場開放、新規参入などによって、 欧米からの巨大異業種資本の参入や、それに伴う放送分野の「市場化」が 急激に進展しており、その結果、従来の日本型のジャーナリズムの在り方 が、根元から問い直されようとしている。  

同時に、在日外国人による小資本のジャーナリズムが、次第に支配的な メディアの分野に参入していることが注目される。近年まで、これらの媒 体は主流のジャーナリズムとはみなされてこなかったが、「国内の国際化」 といわれる未曾有の変動によって、次第に無視できない存在になりつつある。  

「エスニック・メディア」と呼ばれるこうした媒体は、従来の活字媒体に 加え、現在では放送分野にも積極的な進出を始めており、多くの日本人の受 け手層を獲得するに至って多言語化現象研究会いる。文化的・宗教的背景の異なるエスニック・ メディアが、今後の日本社会に対してどのような影響を及ぼすのかは、ます ます重要なテーマとなるであろう。  

本報告では、約1世紀にわたる旧来外国人、および新来外国人を対象とす るエスニック・メディアの展開を通史的に取り上げ、それぞれの時代にお ける特徴を検討しながら、両者を、活動形態、受け手の特徴、使用言語、 民族性の表出等の分析軸によって比較することを試みた。また、新来外国 人の媒体が現在直面している問題についても、産業的側面や言論的側面等 から論じた。

報告後、エスニック・メディアの厳密な定義に関する問題をはじめ、外 国におけるエスニック・メディアとの対比、戦前・戦中期の中国人留学生 を対象とした媒体について議論が行われ、さらに放送媒体の現状について 現場からの問題指摘があった。今後、以上の指摘をもとに考察を重ねていく 予定である。 

  中野克彦
 

多言語化現象研究会