「多民族国家における教育政策」乾 美紀

未だ発展段階にあり、葛藤や紛争が表面化しやすい途上国においては少数民族の諸問題
が深刻である。途上国の多くが多民族国家であることを考えると、多民族国家における
少数民族の教育政策は重要な問題である。それでは、多民族国家においてどのような教
育政策が効果的であり、理想とされるのであろうか。
第一に、アメリカ、イギリス、オーストラリア等の先進諸国では、かつて同化政策が理
想とされ一般的であった。少数派の生徒たちを多数派の価値観に同化させていくという
のがその政策であったが、次第に異なる民族が多様性を認めた上で共生していくという
多文化主義への変遷を見せている。第二に、東南アジアでは、かつてシンガポールのみ
が多文化主義を採用しており、その他の国々は同化主義または統合主義を掲げていた。
しかし近年では、途上国として位置付けられているインドネシアやタイなどの国が、少
数民族の言語や文化を守るカリキュラムを採用しており、徐々に多文化主義の方向に転
換しつつある。
それでは、途上国においても多文化主義の導入が可能であるか。確かに、途上国と先進
国とでは政治的・経済的背景も異なる上、途上国では開発を急ぐあまりに多文化を享受
している余裕はないといわれるが、異なる民族が共存していくことは多民族国家の重要
な課題である。それゆえ、今後は途上国の教育政策においても多文化教育の理念が反映
していくことを期待したい。
950da92i@mailgate.kobe-u.ac.jp

 

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