アメリカ合衆国における二言語教育を巡る政治的議論
〜カリフォルニア州二言語教育廃止運動を中心に〜


発表者:柿原武史 (大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程1年)


本発表では、アメリカ合衆国、特にラティーノ(スペイン語系住民)が最も多いカリ
フォルニア州における、公用語制定運動と(スペイン語を用いる)二言語教育を巡る
政治的議論に焦点を当て、合衆国の言語政策の現状を報告した。これに先立ち、合衆
国におけるこれまでの移民政策や、言語政策、教育政策の歴史を簡単に振り返ること
により、現在の英語公用語化運動や二言語教育廃止運動の議論がどのような背景から
生じたかを明らかにした。二言語教育廃止運動に関しては、1998年に住民投票の結果
通過したカリフォルニア州提案第227号を巡る世論調査結果を分析した。これによ
り、実際にはラティーノは、報道されたほど二言語教育廃止を望んでいたのではない
ことを明らかにした。また、各種報告書が指摘しているように、法案通過後は、法案
の内容の曖昧さが原因で、教育現場で混乱が生じていることを報告した。また、近年
の政権が採ってきた言語政策を踏まえ、現共和党政権が保守化を強め、二言語教育に
対する予算を削減する可能性を指摘し、今後の動向を注視する必要性を訴えた。

kakihara@lc.lang.osaka-u.ac.jp

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